稼げるようになったアフィリエイターは事業規模を大きくするようになり、リソース量で他を圧倒しようとする傾向が強くなっている。この傾向が続けば自分達の首を絞めることになる。加えて、「アフィリエイト・ドリーム」と言われるような弱者が成功するための機会から先に奪っていくだろう。
アフィリエイト強者の持つリソースはアフィリエイト以外の事業にも生かせる。アフィリエイトを最終的な目標にはせず、リソースを貯める通過点にして、アフィリエイトからの「卒業」も積極的に検討すべきだ。
この記事ではアフィリエイトで稼ぎたいと思っている人、稼いでいる人たちへ
▶ 差別化の難しいアフィリエイト事業
▶ 敗者復活手段としてのアフィリエイト
といった2つの性質を詳しく解説してから
▶ アフィリエイト事業からリアルビジネスへ
進むべき理由についても詳しく述べていきたいと思う。
差別化の難しいアフィリエイト事業
アフィリエイト事業、ビジネスにおける一番の欠点はパクられやすいという点である。記事における一部表現や構成、デザインといったコンテンツはもちろん、ノウハウもパクられやすい。
商品やサービスの開発を開発するメーカーであれば、様々な過程で他社との違いを明確に打ち出せる。しかし、アフィリエイト事業は一番の収益ポイントが検索エンジンからの流入であり、情報というコンテンツである以上、差別化も限られてしまう。
アフィリエイトは需要の隙間を埋めるビジネスとも言える。その隙間で注力することは限られており、後発で学ばない人ほど、パクリで乗り越えようとするのだ。
こうしたパクリが蔓延する業界なので、ここ1年、結果が出たSEO面での施策もアフィサイトではやらなくなっている。アフィサイトに施すSEO対策はすぐに普及し一般化してしまう。それほど他業種よりも差別化が難しくなっているのだ。
確かに、コンテンツSEOが全盛で、オリジナリティ、質の高い記事を書く個人ライター、ブロガーにお金が集まる傾向が進んだ時期もあった。しかし、キュレーションサイトが収益面で大きく成功したように、アフィリエイトも金銭的、労力的リソースを大量に注ぎ、パクリとリライトの指示でコスパを高めれば誰でも稼げた。差別化が難しくなれば効率化を進めつつ、最終的にはリソースを集中させ、他者を引き離す戦略が正解だ。オリジナリティのある記事でバズらせても、上位表示が目的であり、結局は外部評価を高める手段の1つに過ぎない。
ファンを抱え続けるだけの吸引力と継続的なコンテンツ投稿が無いと、当然食われるだろう。今後もこの傾向は更に進むと考えられる。
芸能人のブログは独自のファンを抱えており、書いている人・個人への興味を目的にユーザーは訪れている。こうしたファンを引き剥がして、自身のサイトへ誘導することは難しい。大手メディアに一定の露出があるような芸能人なら、企業には奪えないトラフィックがある分、これからも稼げるだろう。しかし、芸能人でもないブロガー含むメディア運営者はファンだけで稼げるだけの十分なトラフィックを得られない。芸能人や読者モデル、人気YouTuberなどのセミプロを除くと、ファンだけで食べているメディア運営者は0.01%もいないだろう。ほとんどのメディア運営者はGoogleからの流入に収益の多くを依存する。個人ブロガーが大手サイトとぶつかれば、圧倒的な効率化等の工夫が無いと、長期的に続けることは難しい。
はてなブログなど、個人が有利な特定リンクを得られるプラットフォームもある。だが、参入者が増え、特定リンクの効力も相対的に下がっている。同一ジャンル、同一クエリを狙う競合のはてなブログが増えれば、はてなというプラットフォームの優位性も下がっていくだろう。
日本のネット広告市場は20年間6兆円程度と規模が殆ど変わっていない。しかし、現在もテレビ、新聞といった大手メディアから奪う形でネット広告市場は2桁の成長が毎年続いている。バブルとも言えるこうした成長の恩恵を受けているため、ネットメディアでは奪い合うはずのパイも増えている状態だ。
このネット広告市場の成長はすぐに終わることは無いだろう。しかし、こうしたネット広告市場の成長と並行し、隙間を埋めるように大量のリソースが投入されれば、差別化が難しくなり、リソースの限られた個人ほど十分な収入をあげることも難しくなる。
数年でこうしたバブルが終わるとは思わない。ただ、経済成長の止まった日本においては、将来におけるアフィリエイト事業の飽和は避けられないだろう。
敗者復活手段としてのアフィリエイト
こうした飽和が進めば、大規模なアフィリエイト事業を行う組織よりも先に、リソースの少ない個人から弾き出される。アフィリエイトでないと稼げない、生活できない個人から稼げなくなっていくのだ。
労働流動性の低い日本では、転職によるキャリアアップも明確なスキルを求められる業種「以外」では厳しい。多くの人は新卒で上手く就職し、キャリアをムダにしない道へと進まなければならない。一度こうしたキャリアから外れれば明確なスキルを持たない限り、待遇の良い正社員になるのも難しくなる。
もちろん、起業といった一発逆転のチャンスは誰にでもある。しかし、やはりリスクは伴うし、そもそも参入までの障壁は高い。
アフィリエイトはコストを殆どかけずに始められる事業だ。くわえて、参入障壁も低く、ネット環境があり、文字が打てれば誰でも始められる。学歴やキャリアといったバックグラウンドのない引きこもりやワーキングプアーがキャッシュを獲得する手段として最も現実的な事業だ。多くの人は気づいていないが、起業のためのキャッシュを確保したり、敗者復活の過程を繋ぐ「場」になっている。
この「場」が無くなってしまった場合、這い上がるための選択肢も狭まってしまうだろう。
アフィリエイトは敗者復活の手段として、これから参入してくる人にも入り込める余地を残して欲しいというのが著者の個人的な感想だ。ビジネスは弱肉強食の世界であり、これがキレイ事と批判されても反論はできない。あくまでも個人的な見解である。しかし、アフィリエイトで結果を残した人なら、この「場」に恩義を感じているのが普通のはずだ。
法人でのアフィリエイトサイト運営
著者は大規模なアフィリエイトサイトの運営を否定的に見ている。しかし、アフィリエイトの法人化と大規模事業化は必ずしもイコールではない。
著者は個人名義と法人名義でサイトを運営している。アフィリエイト事業の法人化についての質問は過去に何度も「してない」と答えている。法人の方は知人が代表で、会社経営には殆ど関与していないからだ。また、付利意雷布亜関連のサイトは全て個人で運営している。
法人でのアフィリエイトサイト運営は誰もが選択肢に入れて良いと思う。
規模を大きくすれば節税の機会が増える。だが、小規模な組織でも法人化するメリットはある。特に、サイト売却を含め、ウェブサイトと個人を引き離す時は法人化しておいた方が良いだろう。
株の売却益は上場会社の株式でなくとも、日本だと税金が一律20%らしい。サイトを作る度に従業員雇って黒字化後、運営会社を作る(法人化する)。これを繰り返し、会社を作って、高く買ってくれそうな会社に営業する。本体は初期の運営とサイトを高く売るための営業部隊、みたいなことしようかな。
— 付利意雷布亜🔗1代目 (@freelifer1) 2017年12月3日
ウェブサイトをサイトの事業部隊ごと法人化し売却すれば、どんなに高額でも税金は20%程度である。売却額にもるよが、30%以上の税金を節約できることもあるだろう。
また、家族がいる人は自分個人と切り離された存在として、収入源を残してあげるという意味でも重要である。
個人事業主アフィリエーターは死んだら困る〜の巻。https://t.co/EMB27P9vGC
法人化のメリットって、サイト売却を含め、ウェブサイトを個人と引き離す時やと思う。売却益にかかる税金も20%程度に抑えられるしね。逆に言うと、個人から引き離す予定が全く無い人は法人化の必要あんまりない。( ˘ω˘ )— 付利意雷布亜🔗1代目 (@freelifer1) 2018年5月6日
大規模事業化による節税といった、一般的に良くある理由での法人化には否定的である。しかし、すべての法人化を否定的に見ているわけではない。
売上額で優劣が決まるアフィリエイター
法人化は事業拡大といった大規模化へ突き進む恐れがある。正確に言うと、進まざるを得ない部分が多い。これは税制面だけでなく、この業界は組織だろうが個人だろうが売上で優劣が決められるからだ。
優劣は広告主による対応や広告単価だけでなく、アフィリエイター同士でも付けられる。組織の売上総計だろうが個人だろうが関係なく、アフィリエイト業界では、売上は大きい方が評価されるのである。実際、月8桁越えたと言ってる人は殆どが法人組織や外注を使い上げた売上であるが、個人の実力であるかのように評価されているだろう。
何十人もの従業員を抱え、アフィ事業を進めるのは経営者としては尊敬する。しかし、アフィリエイターとしての評価とは関係がない。
こうした評価の慣習は結果的にキュレーションサイトのようなサイトや組織を作りかねない。個人のコンテンツはパクられ、リソース量での勝負に持ち込まれる。コンテンツによる差別化は難しくなり、組織化、大規模化を加速させ、個人における敗者復活の機会を急スピードで奪っていくだろう。
アフィリエイト事業からリアルビジネスへ
アフィリエイト「以外」で収益を得る仕組みを整えているメディアは、アフィリエイトサイト向けではない集客に重点を置くようになっている。もちろん、集客の中心はGoogleなので、アフィリエイトサイトとは違ったSEO対策面での差別化である。
また、オンラインに限らないリアルビジネスでは、差別化も無限に広がる。商品やサービスの紹介だけでなく、品質そのものを改善したり、商品やサービスのPRもアプリやエンターテイメント、リアルと絡めて行える。差別化が維持できる時間もアフィ事業より長いので、よりクリエイティブな部分を引き出したいならこうしたリアルビジネスも絡めた方が良いだろう。
アフィリエイト事業でなくとも、アフィリエイトで貯めた知識や金銭などのリソースは生かせる。今後も加速するであろうパイの奪い合いで消耗するよりは、競争の少ない、より差別化のしやすい事業もしくは海外へ進んだ方が長期的には正しい選択になるはずだ。もちろん、全く関係のない分野だったり、短期的な視点ではリスクが大きいことも否定はしない。
アフィリエイトに助けられたと思っている人ほど、アフィリエイトからの卒業を積極的に検討して欲しい。アフィリエイトは成功までの間を繋ぐ媒体であり、手段である。アフィリエイトで稼ぐことを最終的な目標にしないで欲しい。
強者の事業拡大が普通になれば、大手の寡占化は更に進むだろう。アフィ戦国時代だからこそ可能な「アフィリエイト・ドリーム」、弱者が成功するための機会を奪うことになる。アフィ事業の拡大化に否定的な考えはもっと広がってほしいと思う。
