外貨預金は円安時、対外的なリスクを減らせる点や日本円よりも高い金利を得られる点、銀行独自のサービスを受けれる点で、すべての人が検討すべきサービスである。
外貨預金は海外現地の銀行だけでなく、日本の銀行でも行える。日本の銀行で提供される外貨預金サービスは原則として通貨を引き出せないなど、通貨本来の性質からは離れている。どちらかと言うと、定期預金により金利を得るためのバーチャル通貨になっている。ただし、ソニー銀行が発行するSony Bank WALLET(ソニーバンクウォレット)は海外での外貨建て決済も手数料無料できたり、リアルに近い性質になっている。また、外貨預金残高により、国内のデビットカード決済を1%以上にできる銀行や証券口座への外貨振替ができる便利な銀行もある。
日本国内の銀行で外貨預金する場合、為替手数料や定期預金金利、扱い通貨だけでなく、銀行独自のサービスもきちんと把握しておくべきだ。
この記事では
▶ 国内銀行における外貨預金の「比較」
▶ 外貨預金で提供される各銀行のサービス
▶ 海外の銀行で現地通貨を預金したい人が知っておくべきこと
から
▶ タイプ別、外貨預金でおすすめの銀行
まで詳しく述べていきたいと思う。
国内銀行における外貨預金の「比較」
外貨預金では銀行ごとに
・取扱通貨
が異なっている。
また、
・為替手数料
・金利
も異なる。これらは外貨預金サービスを利用する前にチェックしておいた方が良いだろう。
外貨預金の利用者が多いのは大手都市銀行だろう。しかし、外貨預金サービスが充実しており、手数料も安く、金利も良いのはネット銀行である。
国内銀行における外貨預金について取扱通貨、米ドルにおける為替コスト、金利を例にまとめて比較すると下記のようになる。
取扱通貨 | 片道(買付、払戻)の為替コスト(1ドルあたり) | 金利(米ドル) | |
住信SBIネット銀行 |
9通貨 米ドル |
4銭 |
普通預金 定期預金 |
ソニー銀行 |
12通貨 米ドル カナダドル |
4銭から15銭 |
普通預金 定期預金 |
楽天銀行 |
8通貨 米ドル |
25銭 |
普通預金 定期預金 |
じぶん銀行 |
8通貨 米ドル |
0銭(払戻は25銭) |
普通預金 定期預金 |
イオン銀行 |
3通貨 米ドル |
0銭(払戻50銭) |
普通預金 定期預金 |
GMOあおぞらネット銀行 |
8通貨 米ドル |
2銭 |
普通預金
|
新生銀行 |
13通貨 米ドル |
15銭 |
普通預金 定期預金 |
三菱UFJ銀行 |
6通貨 米ドル |
25銭(インターネットバンキング) |
普通預金 定期預金 |
三井住友銀行 |
6通貨 米ドル |
50銭(インターネットバンキング) |
普通預金 定期預金 |
みずほ銀行 |
6通貨 米ドル |
40銭(みずほダイレクトまたはATM外貨預金振替サービス) |
普通預金 定期預金 |
2019年10月現在の情報。各銀行のホームページより。
為替コストはインターネット上で取引した場合の手数料になる。大手都市銀の店頭や電話注文にすると、手数料として為替コストも割高となる。
ソニー銀行は優遇プログラムに応じて変化する。また、各銀行はキャンペーンにより、一時的に為替コストを無料にしている。
住信SBIネット銀行による2019年7月22日から9月27日まで米ドルの買付手数料0円キャンペーン、外貨積立なら全9通貨も買付手数料無料キャンペーン(netbk.co.jpより)。
定期預金は預け入れ期間によって変化する。ただし、預け入れ期間が長ければ長いほど金利が良いわけではない。例えば、米ドルの住信SBIネット銀行における金利は下記のようになっている(2019年8月現在)。
他にもソニー銀行、じぶん銀行などでは6ヶ月の米ドル定期預金より、3ヶ月の米ドル定期預金の方が金利が良い。
ソニー銀行の3ヶ月定期預金1.8%、6ヶ月定期預金1.7%(米ドル)
じぶん銀行の3ヶ月定期預金2.15%、6ヶ月定期預金1.55%(米ドル)
(2019年8月現在)
ちなみに、外貨預金は銀行が破綻すると帰ってこない可能性がある。外貨預金は1000万円まで保護される預金保険制度だけでなく、分別管理制度と投資者保護基金制度の適用も基本的にはない。ただし、よほど潰れそうな銀行で無い限り、気にする必要はないかと思う。
外貨預金で提供される各銀行のサービス
外貨預金で提供される各銀行のサービスとして
1.外貨預金残高による外貨決済
2.外貨預金残高からの現地通貨引き出しサービス
3.外貨預金残高から証券口座への振替
4.国内におけるデビットカード決済の還元率アップ
がある。
これらのサービスを提供している銀行は
・ソニー銀行
・GMOあおぞらネット銀行
・住信SBIネット銀行
である。
それぞれサービスごとに詳しく紹介していきたいと思う。
外貨預金残高による外貨決済
外貨預金口座にあるお金は通常、ATMでの引き出しもできないし、決済にも利用できない。国内のATMには外貨も入っていないので当然である。デジタル上の数字に近い性質になっている。
しかし、ソニー銀行のSony Bank WALLET(ソニーバンクウォレット)は「米ドル」「ユーロ」「英ポンド」「豪ドル」「NZドル」「カナダドル」「スイスフラン」「香港ドル」「南アランド」「スウェーデンクローナ」の10通貨、住信SBIネット銀行のミライノデビットは「米ドル」において、外貨普通預金口座にあるお金を使って決済ができる。
しかも、Sony Bank WALLET(ソニーバンクウォレット)は外貨決済手数料が無料である。海外で決済したその金額のみが、引かれるだけである。ソニーバンクウォレットについて詳しくは下記記事を参考に。
住信SBIネット銀行は米ドル決済で2.5%の海外事務手数料がかかる。しかし、この手数料分は年間30回までキャッシュバックを受けれる。つまり、こちらも実質無料になっている。
住信SBIネット銀行における米ドル決済の設定方法を含めて詳しくは下記記事を参考に。
外貨預金残高からの現地通貨引き出しサービス
外貨預金残高からの現地通貨引き出しも、ソニー銀行のSony Bank WALLETで利用できる。外貨普通預金口座にある現金は現地ATMから引き出せる。ただし、Sony Bank WALLETによる現地通貨の引き出しでは事務処理経費として1.76%加えて、ATM手数料まで取られる。
事務処理経費はともかく、ATM手数料は定額になっている。従って、少額の引き出しでは、最も大きな手数料となりうる。例えば、ATM手数料が1回500円なら、1万円のうち5%はATM手数料として取られることになる。ただし、こちらも優遇プログラムによりステージごとに無料回数が付与される。
クレジットカードのキャッシングではATM手数料も取られないカードも多い。その他の手数料も数%である(カードや通貨、返済期間にもよる)。従って、現地通貨を下ろすなら、ソニーバンクウォレットだけでなく、クレジットカードのキャッシングも検討すべきだ。
クレジットカードによる決済およびキャッシングでの手数料について詳しく知りたい人は下記記事を参考に。
外貨預金残高から証券口座への振替
外貨の証券口座への振替は住信SBIネット銀行で提供されているサービスである。
住信SBIネット銀行で買い付けた「米ドル」「ユーロ」「豪ドル」「NZドル」「カナダドル」「南アランド」「香港ドル」はSBI証券へと入金し、外貨を元手に外国株・ETF、外貨建MMF、外貨建債券の買い付けができる。
SBI証券の外貨入金手続き。SBI証券ホームページの右上の「入出金・振替>外貨入金」で住信SBIネット銀行で購入した外貨をSBI証券へ移動できる。もちろん、振替の手数料は無料である。
外国株や外国ETFの購入手数料を抑えたい人は住信SBIネット銀行およびSBI証券への口座開設がおすすめである。
国内におけるデビットカード決済の還元率アップ
無条件でもっとも高い還元率を得られるデビットカードとしては楽天銀行デビットカードがある。楽天のデビットカードは1%還元を得られる。
条件付きで高い還元率が得られるデビットカードとしてはGMOあおぞらネット銀行のVisaデビット付キャッシュカード、ソニー銀行のSony Bank WALLETがある。
GMOあおぞらネット銀行のVisaデビット付キャッシュカードは外貨普通預金残高500万円以上でデビットカードの還元率が1.5%になる。
ソニー銀行は「外貨」「投資信託」「WealthNavi for ソニー銀行」3つの合計残高でランクが決まる。当然、外貨預金だけで残高の条件を満たしても良い。
これらが500万円以上あるならゴールドランク、1000万円以上あるならプラチナランクである。ゴールドランクなら国内の決済が1.5%還元、プラチナランクなら2%還元にまで増える。
2%還元はクレジットカードを含め、国内のカードでは最高クラスの還元率と言えるだろう。
海外の銀行で現地通貨を預金したい人が知っておくべきこと
預金したい外貨を採用している国の銀行でも、外貨預金は当然できる。しかし、そもそもの問題として、旅行者では銀行口座の開設自体が難しくなっている。また、現地で定期預金における金利が非課税でも、日本の居住者なら日本で申告が必要である(日本で課税される)。
現地銀行口座を持っているからこそ利用できる便利なサービスも、合法的に銀行口座を開設した上で、利用した方が良いだろう。
海外の銀行で口座開設する
現在はマネーロンダリング、課税対策として、就労ビザもしくは長期滞在ができる権利を持つ人でないと、銀行口座の開設自体が難しくなっている。また、口座の開設ができても、現地の居住者でないと、定期預金や一部サービスが利用できない現地銀行も多い。
一部の日本人には現地友人の名義で銀行口座を開設してもらい、それを利用している人もいる。旅行者が銀行口座を開設できない国で活動している代行業者でも、他人名義の銀行口座を渡しているところがある。しかし、他人名義の口座を利用するのは違法なので、個人的にはおすすめできない。また、名義人が権利を主張したら、取り返せなくなるリスクもある。
永住権といった権利を持たない日本人が合法的に海外で銀行口座の開設をしたいなら、企業にスポンサーになってもらうのが一番手っ取り早いだろう。こうした人脈が無ければ、少しずつ構築したり、自分で起業するしかない。
一部の国には金持ち、リタイア外国人向けのビザもある。
税金の問題
海外では預金金利を非課税にしている国も多い。この場合、現地の国へと税金を払う必要はない。しかし、日本の居住者なら、海外の金利収入についても申告し、その分の税金を日本で払わなければならない。この点は日本の銀行で外貨定期預金している人と同様である。
多くの人が申告していないし、バレるリスクは少ないものの、脱税である点は頭に入れておいた方が良いだろう。
現地に銀行口座を持つメリット
まず、旅行者なら現金は持ち歩くよりも銀行へ入れておいた方が安心だろう。また、日本の銀行で提供されている外貨預金では取扱通貨も限定されている。保有したい通貨がない場合、外貨預金は現地に銀行口座を持つのが手っ取り早い。
加えて、現地に銀行口座を持つと便利な決済サービスの利用もできる。海外では銀行がクレジットカードを発行しているケースも多く、現地通貨建てで決済できるため、為替手数料も発生しない。
グレーな部分では財産隠しの手段としても使えるだろう。国内よりも海外の財産の方が探すのは大変である。離婚などの損害賠償請求が予想され、資産を取られそうな人は海外に隠したいと思っている人も多いはずだ。
タイプ別、外貨預金でおすすめの銀行
資産の額にかかわらず、外貨預金および外国金融商品への投資をしたいなら住信SBIネット銀行がおすすめである。外国金融商品への投資を考えているなら、同時にSBI証券口座の開設もしておこう。
住信SBIネット銀行は定期預金金利も高く、頻繁に米ドルの為替コスト0円にしている点も良い。
外貨普通預金の金利を得る目的だったり、外貨預金に500万円程度入れるなら、GMOあおぞらネット銀行がおすすめである。GMOあおぞらネット銀行は為替コストも安く、国内のデビットカード決済で1.5%まで高められる。
500万円以上を外貨預金するなら、国内の決済も1.5%もしくは2%還元を受けられるソニー銀行がおすすめだ。
また、ソニー銀行のSony Bank WALLET(ソニーバンクウォレット)ではクレジットカード以上に、海外における決済手数料を抑えられる。海外で決済する機会の多い日本円で稼いでいる人なら、作成必須のデビットカードと言える。
金融資産が少ない人が円高のメリットを最大限に生かす方法
日本人の多くは資産も日本円建てになっている。円高時には、こうした資産も対外的に増え、海外での様々な支払で有利になる。しかし、円安時には、日本円建ての資産が対外的に減少する。資産の多い人は円安によるリスクを減らすために、外貨預金および外貨建ての資産をある程度持っておく必要がある。
日本円、アメリカドル建ての金融商品を中心に、好みに合わせて新興国に投資するのも良いだろう。
資産を多く持っていない人でも、日本円を稼いでるなら様々なメリットを享受できる。資産を持っていない人は外貨預金の前に、円高のメリットを最大限に生かす方法について頭に入れておいた方が良いだろう。