国民年金は自営業者やフリーターなどが加入する年金である。
国民年金の保険料は2019年10月現在、月1万6410円になっている。この金額は年収によらず一定なので、所得が少ない人ほど負担も大きくなる。年収200万円程度なら税金、国民年金を除く社会保険料も月数千円程度だ。
しかし、国民年金制度は年20万円程度の負担を40年続けるだけで、老後に年78万円の給付が保証されている制度である。一般的には10年で掛金分を回収できる。つまり、払った金額以上をもらえる。
また、どうしても負担できないのなら全額免除もできる。全額免除をした場合、受給額は半額になる。この場合でも年間約39万円をもらえる。
年金制度は批判されている雰囲気だけが頭に残り、悪いイメージだけが定着している人も多い。たしかに、若い人ほど、メリットが減るのは否定はできない。それでも、国民を騙そうと思って作った制度でないのは確かだ。政治家や官僚、専門家たちが議論を重ね、制度を作り上げてきた。年金制度が破綻しているというのも根拠のない主張である。
この記事では
▶ 国民年金は払った方が良い理由
について詳しく紹介するとともに
▶ 国民年金の負担が大きいと感じる人向けの免除制度
▶ 国民年金制度は破綻するのか?
まで詳しく紹介していきたいと思う。
国民年金は払った方が良い理由
国民年金を払った方が良い理由は実質的に負担した金額よりももらえる金額の方が大きくなりがちであり、予想に反して長生きしても、同じ額を受給し続けられるからだ。
払った金額よりももらえる金額の方が大きくなりやすい理由について下記で詳しく紹介していく。
払った金額よりももらえる金額の方が大きくなりやすい理由
国民年金の保険料は2019年10月現在、月1万6410円になっている。今後、年金が上がり続けるとして、1ヶ月2万円、年24万円を40年間払い続けたとすると合計960万円になる。
国民年金を40年間満額支払続けると、65歳以降に年78万円もらえるとされる(1年で受け取れる年金額のめやす|日本年金機構より)。つまり、65歳から12.3年以上生きれば、掛金分は回収できる。
ただ、国民年金の保険料は所得控除を受けられる。つまり、国民年金を支払っていれば翌年の税金支払を減らせる。税金の減る率は年収によるものの、20%程度減らせたと仮定すれば、10年75歳で掛金分を回収できることになる。
日本人の平均寿命は女性87.32歳、男性81.25歳なので、払った金額よりも多くもらえる確率の方が高い。
ちなみに、60歳から70歳までの間、いつから年金を受給するかによっても年金受給額は変わる。通常は65歳から受給がスタートする。65歳よりも前に年金受給を開始する「繰り上げ受給」を行うと受給金額が減る。65歳以降に年金を受け取る「繰り下げ受給」を行うと受給金額は増える。
具体的な受給金額の割合は下記のようになる。
受給開始年齢 | 65歳を100%とした場合の受給金額割合 |
60歳(60歳11ヶ月まで) | 70%~75.5% |
61歳(61歳11ヶ月まで) | 76%~81.5% |
62歳(62歳11ヶ月まで) | 82%~87.5% |
63歳(63歳11ヶ月まで) | 88%~93.5% |
64歳(64歳11ヶ月まで) | 94%~99.5% |
65歳(60歳11ヶ月まで) | 100% |
66歳(66歳11ヶ月まで) | 108.4%~116.1% |
67歳(67歳11ヶ月まで) | 116.8%~124.5% |
68歳(68歳11ヶ月まで) | 125.2%~132.9% |
69歳(69歳11ヶ月まで) | 133.6%~141.3% |
70歳~ | 142.0% |
老齢年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)|日本年金機構より
寿命を予想するのは難しい。ただ、受取時の生活に余裕があるなら、受給を遅らせても良いだろう。
国民年金の負担が大きいと感じる人向けの免除制度
税金や国民健康保険料は年収によっても変化する。しかし、国民年金の保険料は年収によらず一定(現在は1万6410円)になっている。
年収200万円程度なら税金、国民年金を除く社会保険料も月数千円程度だ。その中で国民年金を払うのは大きな負担となるだろう。
ただ、低所得者向けには国民年金の免除制度がある。免除される金額は「全額」「4分の3」「半額」「4分の1」の4種類だ。申請書を提出し、承認されると国民年金保険料が免除される。詳しくは下記ページを参考に。
国民年金の免除申請は各区市町村役所の国民年金担当窓口で行える。上記ページで理解できない場合は直接市役所へ行った方が早いかもしれない。
全額免除をした場合、将来の受給額は半額になる。国民年金を払っていない人でも半分もらえるのだ。目安としては満額の年間78万円に対して、40年間全額免除を続けた場合でも年間約39万円がもらえる。
年1回、区市町村役所へ行けば良いだけなので、年金が払えない人でも申請しなければ損な制度と言えるだろう。
ちなみに、免除なしを1とした場合、国民年金の免除を受けた場合にもらえる受給金額は下記のような割合になる。
免除期間に受給できる年金の割合 | |
全額免除 | 2分の1(平成21年3月分までは3分の1) |
4分の3免除 | 8分の5(平成21年3月分までは2分の1) |
半額免除 | 8分の6(平成21年3月分までは3分の2) |
4分の1免除 | 8分の7(平成21年3月分までは6分の5) |
老齢年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)|日本年金機構より
収入が少なく、年金を支払うのは難しい人はめんどくさがらず、免除制度を利用すべきだ。将来、ここで大きな差が付く。
国民年金制度は破綻するのか?
国民年金を払いたくないという人の中には「国民年金制度は破綻するから」といった事実に基づかない理由を抱えている人もいる。
しかし、現状の歳入、歳出および国民年金保険料の改定を見ると制度が見直され「廃止」されることはあっても「破綻」はほぼ無いと言える。
2019年8月に出された厚生年金・国民年金の平成 30 年度収支決算の概要には「国民年金における平成 30 年度収支決算」があり
歳入 3兆9330億円
歳出 3兆8130億円
と1199億円のプラスだった。
また、歳入により積み立てられている年金は厚生年金分と合わせて時価ベースで166兆4845億円もあり、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による運用では2001年からで66.1兆円もの累積黒字を出している(年金積立金管理運用独立行政法人)。
毎年の歳入歳出は黒字で、厚生年金と国民年金合わせて約3年分の積立金がある。これが一気に枯渇することは無いだろう。
国民年金を払っていく上で頭へ入れておくべきこと
国民年金は破綻する可能性も低く、自営業者やフリーターにおける老後の資金確保手段として加入すべきメリットの方が大きい。毎月2万円弱を支払える余裕のない人も免除制度を利用して、加入の継続をすべきだ。
たしかに、少子高齢化により、年金制度は以前よりも旨味が少なくなっている。将来的に、掛金回収までの期間が平均寿命を越えるようなら損する確率は高いものとなる。また、自分自身、日本の年金制度が完璧だとは思っていない。ベーシックインカムなど、別の若者向け制度に置き換えられるならそちらの方が良いと思っている。
ただ、国民年金は老後生活を継続させるためには比較的最適、高齢者向けの制度であり、一般国民が受けれる老後の旨味として納得するような仕組みで政治家や官僚、専門家たちが議論を重ね、制度を作り上げてきている。負担する金額やもらえる額を見ても、マスコミが言うような若者や国民を騙すだけの制度ではないだろう。
内容をしっかり理解したなら、現行の制度が継続する限り、払い続ける方が賢い選択肢と思えるはずだ。