前回の記事ではバイラルメディア・BUZZ HOUSEの閉鎖理由について失敗要因を述べていった。
この記事がFacebookを中心に予想以上の広がりを見せており、「そこまで言うなら失敗原因だけではなく、失敗しない方法、成功する方法を述べろ」といった意見も出て来ている。確かに、批判するのは簡単で、批判に対する代替案を出さないのはある種の逃げだと思われても仕方がない。
そこでこの記事では4年以上サイトの運営をしている専業アフィリエイターがサイト運営で失敗しない方法にかんして詳しく述べていきたいと思う。
Webサイトの運営方法
営利目的でWebサイトを運営する場合、収益化の方法として大きく分けると2つに分けることが出来る。1つは広告収入によるもの、もう1つは情報やサービスの対価としてユーザーからお金をいただく、要は有料化によるものである。
ECサイトをはじめとしたWebサイト
ECサイトとは商品やサービスを販売するWebサイトのことを言う。ネットショップとも呼ばれるネットで商品を販売するサイトは昨今では数多く見受けられるであろう。小売業に分類され、サイト運営で収入を得る場合にもっとも多い形態でもある。
ただ、今回の記事はBUZZ HOUSEの収益モデルの失敗から派生している。従って、メディアとして情報を提供し、広告収入をあげるサイトに絞って述べていく。ゲームや便利なサービスを提供することで広告収入を得たり、課金による収入を得るサイト運営にかんしてもここでは触れない。
サイトにおける広告
Webサイトの広告は大きく分けるとクリック型広告と成果報酬型広告(アフィリエイト)、スポンサー広告の3つがある。
クリック型広告
クリック型広告でもっとも有名なのはGoogleAdSenseだろう。高単価で記事や訪問者に合わせた広告を設置できるという点で、もっとも優れている広告だと思う。法人であればYahoo!広告(クリック型)の広告の掲載も可能なので幅が広がるだろう。
他にもオーバーレイ表示が可能な広告と組み合わせて上記クリック型広告に収入を上乗せしている人も多い。
成果報酬型広告(アフィリエイト)とスポンサー広告
成果報酬型広告、いわゆるアフィリエイト広告は個人が運営するサイトでも掲載は可能である。アフィリエイト広告とサイト運営者を繋げる代理店のような役割としてASPというものが存在し、個人の信用を担保してくれていると考えれば良いだろう。
アフィリエイト広告に関しては下記記事も参考に。
スポンサー広告は、サイト運営者に対して広告を掲載したい人から連絡を貰うケースの他、サイト運営者が企業にスポンサーになってもらうよう頼むケースがある。
企業が運営するサイトになると、個人でも掲載できるクリック型広告だけでなく、企業スポンサーを得るための営業を行うメディアも多い。
テレビや新聞、雑誌など既存メディアはこの方法で広告収入を得ている。それなりに信頼のあるサイトであれば、企業もスポンサーとして積極的に広告を出すことを考えてくれるだろう。
ウェブサイトの場合、タイアップ記事と呼ばれる企業の宣伝を含んだ記事もあれば、サイドバーなどへバナーを貼るタイプのものもある。有名メディアサイトはもちろん、人気ブログでもこのようなスポンサー広告は見たことがあるだろう。
サイト運営で収入を得る
サイト作成で必要とされる人材
情報を提供し、広告で収入を上げるサイトを作る際に必要な人材は、運営(編集、集客)が出来る人間とコンテンツを作ることが出来る人間である。
サービスやゲームを提供するわけではないので、プログラミングが出来る人は必要ない。逆にサービスやゲームを提供するなら、プログラムを中心に考える必要が出て来る。
情報提供による広告収入を考えた場合
1.どんな情報を提供して
2.どうやって、どんな人を集客し
3.どう収益をあげるか?
を明確にしなければならない。
コンテンツで勝負できる人材がいるなら(確保出来るなら)、1番の「どんな情報を提供して」の部分が固定されるので、集客を担当する人が他の2、3番を調整する必要がある。優秀なライターでも、それを収益に結び付けることは必ずしも出来ないからだ。
集客に自信があるなら、1、3番を考えれば良いだろう。
ブラックハット
使える費用が数千万円も無くとも、数百万円あれば質の高いコンテンツを作成してもらうことが出来るようになるし、評価の高いドメインを購入する事で検索順位の上昇も容易となる。
ペナルティのリスクはあるが、集客に自信があり、手っ取り早く稼ぐことを重視すればブラックハットを用いるのが正解となる。
企業でそのようなスパム行為はしないだろうと考えている人もいるかもしれない。しかし、ネット関連企業は集客がそのまま業績に結びつく。過去にはブラックハットを用いてGoogleからペナルティを受けた上場企業もあった。
手っ取り早く稼ぐ手段として用いることを否定はしない。ただ、ブラックハットはユーザーから見ても企業の評判を落としかねない点は頭へ入れておくべきだろう。
サイト運営の方法
大手電気通信事業者KDDIに買収されたナタリー(運営会社はナターシャ)というサイトがある。
Webサイトとしての価値はKDDIが買収した時には発表されなかった。しかし、同時期に同じく買収されたイエモやメリーといったサイトの価格から推測するに、数十億円の価値は付いていると思う。
ナタリーは音楽や漫画、お笑い、映画などの情報を提供し、広告による収入を得ている。広告は個人でも導入できるクリック型広告、Amazonアソシエイトの他、アーティストのコンサートの告知(スポンサー広告)等がある。
ナタリートップページ。トップには個人でも導入可能なGoogle Adsenseが設置してある。
情報は短い取材記事の他、漫画の紹介、アーティストやお笑い芸人などのインタビューが多い。アーティストはそこで新しい楽曲やコンサートの告知をしているため、インタビューはタダで出来ているかもしれない。人気サイトになれば、広告効果もあるので、無料でも出たいというアーティストは多いだろう。
サイトを見てもらえばわかると思うが、記事は簡潔なものも多く、しっかりとしたコンテンツばかりではない。言い方は悪いかもしれないが、テンプレートに詰めたら誰でも書けるようなもの記事がほとんどだ。
ナタリーの場合記事が薄くとも、アーティストや芸人、漫画や映画の情報を速報することで集客している。
エンターテイメントの速報を配信するサイトはアフィリエイトサイトでも数多く存在し、トレンドサイトとも呼ばれている。
トレンドサイトは情報として新しいため、ニュースとして話題になれば検索数も増え、Googleからの流入も狙える。また、アーティストや芸人、漫画や映画といった情報は元々ファンもおり需要があるため、ソーシャルでの拡散を考えた場合情報の薄さは関係ない。新しい情報であれば拡散されるのである。
ジャンル(ターゲット)を絞り、記事の質を下げることでライター費用を抑えながらもトレンドを配信することで集客を達成した。ここまでは個人のトレンドサイトと総代わりはない。
その後サイトの知名度も上がり、ある程度のトラフィックを抱える事でスポンサーも付く。アーティストにインタビュー出来るぐらいのサイトになれば、個人のトレンドサイトとは比べ物にならないぐらいの差別化も出来るだろう。
実際、トラフィックはどんどん増えて、現在SimilarWebを見る限りではで270万UU、PVにすればサイトの性質上1000万PVぐらいはあるかと思う。
新聞や雑誌といった既存のメディアよりも影響力、宣伝効果のあるメディアともなった。人が集まれば独自にグッズを作ったり、様々な商売も展開できるようになる。独自取材だったり、プロのライターを使った質の高いコンテンツも混ぜることが出来る。
まさに、ナタリーはトレンドサイト(アフィリエイトサイト)からメディアサイトにまで成長を遂げた成功例だといえる。
ライターの確保
短期で収益をあげる事を考えれば、ランサーズなどを使い低価格で記事を発注して、コンテンツ量でGoogleからの評価を高める方法がもっとも効果的だ。検索からの集客を重視するなら、リピーターやファンは必要ない。アフィリエイトサイトの多くがこのような戦略を取っている。
ただ、企業のブランディング、成長を考えているのであれば、ユーザーの満足度をあげてリピーター(ファン)も獲得していかなければならない。顧客として確保できるぐらいのコンテンツを提供する必要性があるだろう。
上であげたナタリーは元々ファンのいるジャンルの「最新情報」を提供する事で、これを達成した。
集客(運営)
集客に関して言えば、短期間で多数のアクセスを獲得するためには露出が重要になる。
ソーシャルでの露出
ソーシャルでの拡散を狙うなら、
・情報として古くないこと
・意外性
・信頼できる情報であること
等が求められる。
ある程度の人脈があるならば、インフルエンサーと呼ばれるそのジャンルで影響のある人に紹介してもらうのがもっとも手っ取り早い。バズを狙うのであれば、FacebookやTwitterの広告よりも効果的だ。
インフルエンサーは信頼性が高い。彼らが紹介してくれた記事なら良質なものと考え、フォロワーなど紹介された人の多くがしっかりと記事を読んで反応してくれる。
昨日の記事はLINEのタカトシこと、田端氏に取り上げられた事で、様々なインフルエンサーにも紹介されバズが起こった。はてなブックマークでのバズが完全に沈静化した後の事だったのでとても驚いた。
やはり、そうなりましたか。>「会社は学校じゃねぇんだよ」。バイラルメディア・BUZZ HOUSEの閉鎖から学ぶ会社を学校にする事の功罪 – 踊るバイエイターの敗者復活戦 http://t.co/DbBGSxdmzL
— 田端 信太郎 (@tabbata) 2015, 7月 1
はてなブックマークでホットエントリー入りもしていなかった記事が田端氏の紹介で一気に拡散した。
「会社は学校じゃねぇんだよ」。バイラルメディア・BUZZ HOUSEの閉鎖から学ぶ会社を学校にする事の功罪 – 踊るバイエイターの敗者復活戦 http://t.co/oWwonvjlDB
— やまもといちろう (@kirik) 2015, 7月 1
起業なんて博打で失敗してあたりまえ。失敗したから駄目だというひとは、じゃあ、自分でやってみればいい。2000万円の赤字なんて大したことなくて、責めるなら、少なすぎだろと責めるべきだよねー。 / “「会社は学校じゃねぇんだよ」。バイ…” http://t.co/17mL4iYyLw
— kadongo38 (@kadongo38) 2015, 7月 1
元ドワンゴの会長川上氏
自分の資金じゃなくて会社の金ならいくらでも無駄にできるという証拠・・「会社は学校じゃねぇんだよ」。バイラルメディア・BUZZ HOUSEの閉鎖から学ぶ会社を学校にする事の功罪 – 踊るバイエイターの敗者復活戦 http://t.co/ta85LjK0k6
— Isseki Nagae (@Isseki3) 2015, 7月 2
ちなみに、イケハヤさんは上記でも上げたようなインフルエンサーに手当たり次第媚を売ることで、うっすい記事でも取り上げてもらうケースが多い。インフルエンサーに「媚を売れ!ステマしてもらえ!」等と言うつもりはないが、バズを狙うのであれば最低限目に触れるための努力と定期的な絡みは心がけるべきだ。
田端氏をはじめ、インフルエンサーの多くはエロいので、ちょっとばかし色気を使えばコロっと紹介してくれるだろう。女性であればより有利であることは間違いない。
検索エンジンからの流入
検索エンジンにかんしてはSEO対策をコンテンツを中心に施す事が重要になる。具体的なやり方をここで述べたら数万字ではすまない。SEO対策に興味のある人は下記記事を参考に。
サイト運営で失敗しない方法
Webサイト(デザイン)、コンテンツ、集客など、費用があればかけたくなる部分はたくさん出て来る。ただ、サイト運営にかんして言えば、費用に対する効果がプロでも予測できない部分が多い。従って、初めは出来る限り費用をかけずに行うことが大事かと思う。
例えば、サイトのデザインにかんしても最初から数百万円、数十万円かける必要はない。汚すぎるサイトは信頼性にも影響するかもしれないが、デザインが良ければ集客出来るわけでもない。WordPressでも有料テーマを使えば1万円以下で綺麗なサイトは作る事が出来る。
BUZZ HOUSEがいくらでサイトのデザインを発注したのかはわからないが、利益が出る前に数百万円の費用をつぎ込んだのであれば間違いだっただろう。
コンテンツも高いお金を払ってプロに書いてもらえば必ず集客に結びつくわけではない。正直、その道のプロよりも、ブロガーの方が決まったジャンルでもユーザーのニーズをわかっていたりする。従って、メディアを始める前に多くのブロガーとの繋がりを作ることから始めるのも良いだろう。もちろん、運営するサイトのジャンルを書けるブロガーが好ましい。
プロよりもセミプロであるブロガーの方が費用対効果は高い。繋がりを構築すれば、ブログの宣伝にもなるため、無料でも記事を寄稿してくれる人も出て来るはずだ。
集客にかんしては、管理人は最低限の知識を身につけなければならない。コンサルタントを付けるにしても費用で高く見積もられる可能性があるだけでなく、間違った方法を施されて大きな損害をこうむることも多々あるからだ。ブラックハット等が良い例だろう。
まとめると、豊富な資金があったとしても、利益が上がるまではサイトのデザインは抑える。コンテンツと集客は、効果的だったものに対して予算をどんどん増やす。広告にかんしてはリスティングやFacebook、Twitter広告、雑誌など様々な媒体を試して行くことでしか、サイトに合った方法というのがわからないケースも多い。費用に余裕があるならこの点は非常に有利で、効果的なものにどんどん費用をつぎ込むことが出来るだろう。
事業失敗への批判
先日のBUZZ HOUSEの閉鎖にかんする記事では多くの賛同とともに、「人の事業失敗に対して批判をするな!」「日本では出る杭は打たれるからダメだ!」といったコメントも多く頂いた。上で紹介した川上氏の発言もその部類だろう。
BUZZ HOUSEを批判したのはオリジナリティの問題やリンクのノーフォローの件もあった。
ただ、サイト運営、メディア運営を5年ぐらいやっている自分からすると、コンテンツや集客を含めたサイト作成で数千万円というのは遊び過ぎたと言わざるを得ない。公平にチャンスが与えられる事の無い世の中で、金額に見合わない仕事をすれば世間から批判されるのは当然かと思う。彼の場合挑発的な発言も多かったので尚更だ。
「日本では~」などど言う人は、実際海外でこういった失敗をした時にどういう反応をされるのか知らない人が多いのではないだろうか?ハッキリ言おう、欧米はもちろん海外は日本以上に叩かれる。それぐらいシビアでかつ自己主張の強い人ばかりだ。
例えば、同性愛に対しても海外の方が寛容だという意見もあるが、賛成派が積極的に主張する反面、反対派も根強く、日本よりも平気で差別を行う。宗教上の問題も絡むため、日本ではあり得ないが殺人まで起こっているぐらいだ。
つまり、海外でも、むしろ海外の方が酷い叩かれ方をするわけだが、日本との違いは叩かれても本人が引っ込まないという所である。欧米のアーティストでもそうだが、メディアに叩かれても堂々としているし、更に世間を煽るような発言をしたりもする。出る杭が打たれるのはどこも一緒だが、海外の方は杭自体が引っ込まないのである。
従って、彼の失敗に対して批判をするなという意見を述べるぐらいなら、彼に応援メッセージの1つや2つを送るのが正解だ。
ホリエモンだって、いくら検察を批判した所で何も変化しなかっただろう。彼自身が打たれ強く、批判と向き合い常に戦い続けているから復活したのだ。
数千万円を少ないという人も多かった。しかし、サイトを今まで運営して来た経験上、どういう金の使い方をすれば数千万円の赤字が出せるのか不思議でしょうがないというのが正直な感想だった。
もちろん、価値観は人それぞれで、あくまで個人的な感想になる。その辺はご理解いただきたいと思う。