2017年3月に決定された「働き方改革実行計画」により、日本の会社員における副業は「原則禁止」から「原則容認」へと真逆に変わった。副業は赤字を補填できたり、給与所得のある人にはメリットの多い稼ぎ方である。

副業の原則容認により、解雇や減給といった懲戒処分が認められないケースは増えていくだろう。ただ、全ての副業が無条件に許されるわけではない。
この記事では副業禁止の会社で副業をしたい人のために
▶ 副業が原則容認でも守るべきルール
から
▶ 副業禁止の会社で副業を行う前に知っておくべきこと
まで詳しく述べていきたいと思う。
副業が原則容認でも守るべきルール
まず、会社は副業(兼業)禁止規定を設けても良い。多くの判例でも、兼業禁止規定自体は有効と判断されている。したがって、兼業禁止規定がある点について争うのは賢明ではない。副業がバレた時、多くの会社員は兼業禁止規定があること自体おかしいと会社を責める。しかし、この点で文句は言うべきではないのだ。
会社員が争うべきは副業が会社にばれ、会社から何らかの懲戒処分(解雇や減給)を受けた際、この懲戒処分についてである。
有効な懲戒処分と判断されないために、副業を行うにあたり本業において
1.支障をきたさない
2.企業秩序を乱さない
3.競業避止義務を守る
以上のルールは守らなければならない。これらを守らずに副業をし、懲戒処分を受け、処分について裁判所で争っても不利な判決がなされる可能性は高い。懲戒処分についても当然、会社側の主張が正しいと客観的に判断されることもあるだろう。
本業に支障をきたさない
副業禁止規定の会社においても就業時間以外の活動は制限できない。しかし、就業時間以外でも、本業で支障をきたすような副業をしていた場合、懲戒処分は認められてしまう。
本業で支障をきたすような副業かどうかは
・副業している日数
・時間
・時間帯
・疲労度
などから判断される。
過去に「本業以外のアルバイトを深夜に長時間続けている」を理由に解雇され、裁判になったことがある。この判決は「単なる余暇利用のアルバイトの域を超えるもの」と判断され、会社側の主張(解雇)が認められている。
企業秩序を乱さない
企業秩序を乱すような副業としてはMLM(ネットワークビジネス)の勧誘を社内で行ったり、暴力団などの反社会勢力と接点を持ったりするビジネスがある。
社内秩序を乱すような副業を行った場合、副業が禁止されていない会社でも有効な懲戒処分の対象になりうる。
また、守秘義務を守らなかった場合、たとえば、社内のノウハウや秘密情報、顧客情報などを使って副業をすることも、企業秩序を乱す行為、もしくは下記で紹介する競業避止義務違反になりうる。
競業避止義務を守る
副業の業務が本業と競合する場合、これも有効な懲戒処分の対象となりうる。たとえば、本業と同じ商品を同じ取引先から仕入れただけで、解雇事由に相当するとした判例もある。
ネットショップ、店舗での小売を副業で行う場合、違う商品・ジャンル、できれば違う取引先を使う必要があるだろう。アフィリエイトサイトなどのメディア運営の副業でも、同じジャンルの情報を扱い、アクセスを奪い合うような関係になるのは好ましくない。
本業とビジネス上でライバルになりうるような副業は広く競業避止義務違反に該当すると覚えておくべきだ。
副業禁止の会社で副業を行う前に知っておくべきこと
副業の原則容認は民間企業に限った話である。公務員は2018年6月に公益的活動に限った副業「のみ」が容認の方針になっただけである。
近年は地方公務員も地域の情報を発信したり、個人でのビジネスが活発になっている。公務員の多くは上司や組織に確認した上で、こうした副業も行う人は増えているだろう。
民間企業では、上で詳しく説明したように、副業は原則容認となった。副業(兼業)が社内規定で禁止されている場合も、
1.本業に支障をきたさない
2.企業秩序を乱さない
3.競業避止義務を守る
以上のことを守れば、懲戒処分などの処分が無効になりうる。国の方針や判例に従った上で副業を行えば、会社も処分しにくいだろう。
ただ、懲戒処分がなされないと言っても、会社の要望を無視して社外の活動を続ければ、社内での立場が悪くなるのは否定できない。出世や昇給に影響するかもしれない。したがって、副業禁止規定(原則副業禁止の規定)を設けている会社に対しては、副業を容認してもらった上で、副業規定を作成してもらうように求めてみよう。会社員としては副業規定に従って副業できる形にするのが、もっとも理想的な形になるからだ。
副業禁止規定を設けており、副業規定を作成してもらえない会社で副業するなら、なるべくバレずに副業を行わなければならないだろう。
