日本に対する好意度ランキングと日本賞賛メディアの功罪

Little Tokyo, Los Angeles -- Aug 14, 2010Little Tokyo, Los Angeles — Aug 14, 2010 / Ray_from_LA

 

電通は先日2015年6月22日20カ国・地域で実施していた「ジャパンブランド調査2015」の結果を発表した。

http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2015066-0622.pdf

 

この調査は、日本の文化や強みを生かした商品やサービスを海外展開する「クールジャパン」関連事業において、顧客企業のマーケティング活動支援を目的として行われている。恐らく政府からいくらかの税金も投入されているだろう。

 

ビジネスを展開する上でも役に立つ様々な調査結果が発表されたが、一般的にも興味を持った人が多いのは「日本に対する好意度ランキング」だろう。もちろん、ランキングという分かりやすい形であることも話題として広がりやすい。

 

これによると、2015年国ごとの日本に対する好意度ランキング」は

 

1位 ベトナム(1)、台湾(5)
3位  タイ(2)
4位 インド(4)、フィリピン(7)、 ブラジル(9)
7位 香港(7)
8位 シンガポール(5)
8位 マレーシア(2)
10位 イタリア(10)

※()内は去年の順位

 

あくまで20カ国内での順位だが、このような結果となった。ベトナムが不動の1位である。

ベトナムと言えば、親日という印象よりも反中(反中国)との印象が強い。

去年の反中国デモで16人の中国人を含めた死者が出ている(他にも23名重傷、103名軽症)。中国の反日デモでも日本人が殺害はもちろん怪我を負ったというケースは無かったので、いかにベトナムで反中国意識が高いかを物語っているだろう。当時は 香港人が日本人に紛れて救出されたというニュースもあった。

 

台湾は昨年の5位から順位を大きく上げて1位となった。両国間の観光客が近年大幅に上昇、特に日本から台湾への旅行者が増えた事で民間の交流が活発になっている。

周辺の経済(ビジネス)も大きな盛り上がりを見せ、ピーチ(LCC)が8月から羽田ー台北間の乗り入れを決めた事も新しい。民間の交流は更に広がっていくだろう。

 

3位にはタイがランクインしている。タイは毎年上位にランクインしているが、近年は台湾と逆で、日本への渡航者が大幅に上昇した。これは日本政府がタイ人へのビザを免除したのが大きい。

日本へのタイ人旅行者数は2012年26.6万人だったが、ビザを免除した2013年には45.4万人、2014年には65.8万人と2年で倍増、今年2015年には更に増加しており、近いうちに100万人を越えることが予想される。

 

最近日本でもよく見る東南アジア系の人の殆どがタイ人だと思って良いだろう。ちなみに、ヒジャブと呼ばれる体をすっぽりと隠すフードの付いた衣装はイスラム教徒の多いインドネシア人で、仏教徒がほとんどのタイ人はこうしたフードを被った服装はしていない。

 

アジア圏では韓国や中国を除いて軒並み日本の好感度は高い。ただ、中国人、韓国人が日本人を嫌っているかとは別で、中国本土を長期間放浪した時も日本人というだけで差別的に扱われた事は無かった。

 

アジアと他の地域での日本の存在感

東南アジアを含めた東アジアは長期間放浪した経験があり、欧米にも一般的な旅行よりも長い期間滞在した事はあるが、日本に対する位置づけはアジアとそれ以外では明らかに異なっていた。

 

東アジアでの日本の存在感

例えば、中国でも香港でも、ニュースで日本にかんする事を扱うのは何度か見たことがあった。政治・経済的なものが多いが、有名歌手の来港(香港に来る事)やエンターテイメントにかんするニュースも長期で滞在すると何度か目にする。

台湾は中国、香港よりもこうしたニュースの割合は多い。

 

タイやベトナムになるとエンターテイメントにかんして日本が登場する事は少ないが(韓国のアイドル、歌手は度々登場している)、日本関連のCMは度々目にしている。確かに、広告は韓国企業も多いが、タイではタイの企業でも「おいしい」という言葉が出て来るし、和食の宣伝も多い。

 

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バンコクの主要駅・サイアム駅。OISHI(おいしい)ブランドの緑茶と中央奥にはサクラのシャンプー

 

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カネボウのKATE TOKYO広告は東京タワーがBTS車両に施されている。

 

去年の7月、タイのドラマでもっとも人気があったのも日本を舞台としたドラマだった。名前は「The Rising Sun(「昇る太陽」、もちろん日本を形容した名前)」。ドラマの撮影も千葉県など、日本で行われた。

http://media.thaitv3.com/store/media/wallpaper/2014/07/15/thumb1024_2161948536.jpg

 

 設定が日本なので、名前はもちろん、浴衣や桜など日本っぽさも満載。演じているのはもちろんタイ人の俳優達である。

 

政治・エンターテイメントの話題が多い台湾、香港、中国に比べて、東南アジアの国々は主に経済的な日本の影響の強さを感じる。タイは東南アジアで中心的な役割を果たしているが、他のアジアの国とは少々事情が異なるようだ。

 

もちろん中国も東南アジアでは経済的に影響力がある。ただ、民間レベル、個人の感覚で言えばまだまだ日本の存在感の方が強い。

 

欧米における日本の存在感

欧米にかんしてはアメリカにフランス、イギリス、ドイツに行ったことがある。アジア各国を回った後にこれらの国へ行った感想としては、日本はアジアよりも存在感が無いという事である。

地理的にも離れているし当たり前と言えば当たり前の話ではあるが、まずニュースで日本にかんする話題を見たことがない。エンターテイメントで日本の歌手が取り上げられる事も少ない。

 

もちろん、一部のメディアでは日本人アーティストのコンサートを取り上げたり、インタビューを載せたりはするだろうが、アジアのように大手メディアで取り上げられる日本人アーティストは殆どいない。

イギリスでは日本人サッカー選手の名前を上げても知ってる人はほとんどいなかった。恐らく、認識としてはアジア系の選手がいるなぐらいは思っているだろうが、名前までは覚えていなかったのである。

 

上記記事でも最後に

プロ3年目で力投を続ける20歳の若武者はアメリカの野球ファンからすでに大きな注目を浴び始めている。

とあるが、果たして本当だろうか?欧州における日本人サッカープレイヤーよりもアメリカでの日本人野球選手の知名度は高いと思うが、アメリカで活躍もしていない大谷選手がファンから大きな注目を浴びているとは到底思えない。 

 

ただ、欧州でもアメリカのアーティストばかりが活躍しているかといえばそれも違う。殆どが自国のアーティストである。そう考えれば、日本人を見ないのも、当然といえば当然かもしれない。

 

テレビだと欧米でも日本のアニメやビジュアル系が人気とよく報道されているが、割合的には日本よりも圧倒的に少ない割合だ。

「日本人でビジュアル系が好きな人が周りにどれぐらいいるか?」と尋ねられたとする。あなたはどう答えるだろう?

個人的な感覚で言えば、とても少ないように思うが、欧米ではそれ以下である。つまり、殆どいない。アニメのオタクも同様である。これはアニメ、漫画の市場規模を見てもわかるかと思う。

 

誤った認識が広がる理由

こうした誤った認識が広がる理由は単純である。確かにファンは存在はするし、それを偽装しているわけではない。しかし、割合の圧倒的に少ない人を「敢えて」取り上げて報道するので、間違った誤解が生じるのだ。

http://nihongo.japan-expo.com/img/lib/4688_size1.jpg

フランスのジャパン・エキスポでは2013年約23万人が来場している。来場者はフランス以外にも欧州全域から訪れており、果たしてこれは多いのか? http://nihongo.japan-expo.com/

 

日本にいる外国人を基準として語るケースは言うまでも無い。日本にいる外国人、特に強い目的を持って日本にいる人達が日本の何らかの部分に興味を持っているのは当然の事である。

 

また、メディアが取り上げるのは、海外でも日本にかんする部分が中心になってしまうというのも大きな理由だ。サッカー、野球選手のインタビューで日本人の名前が出れば、大部分は省略して、それを題名にして記事が書かれてしまう。

記事を見ている側からすれば、日本がインタビューでの主要なトピックだったと勘違いしてしまうだろう。

 

親日の質と日本賞賛メディアの功罪

New year emperor apparition crowd-b&wNew year emperor apparition crowd-b&w / kanjiroushi

欧米における親日度は本当か?

こうした日本の存在感には大きな誤解が生じているが、親日度にかんしては間違いではないだろう。

欧米でも日本人と言われて悪い印象を抱く人は少ないように感じた。少し前まではダサいダサい言われていた日本人だったが、自分が欧州にいた時は「日本人はオシャレ」と言う人もいた。ノーメイクの多い海外女性と違い、外出時にはほぼ100%メイクする日本人がほとんどだし、オシャレをする若者の旅行客が多いからだろう。

フランスのホテルでは南米から来たブラジル人と話す機会があったが、彼らの日本に対するイメージもかなり良かった。

 

とはいえ、東アジアに比べると、日本が実体を伴わないイメージ上のものが多くなるようにも思えた。もちろん、アニメとかが好きだったり、日本の文化や日本食が好きで積極的に接点を持っている人もいるだろう。ブラジル人も車といえば日本車と言ってたし、サンパウロなど日系移民の影響力が強い地域もある。

ただ、アジア以外では、触れる情報や実際に日本人と接する機会は圧倒的に少ないし、より間接的な接点しか無い。希釈されて届いた日本の情報から、イメージを個々に作り上げているのである。

 

従って、同じ親日でも「質」が明らかに異なるだろう。ビジネスで言えば、日本ブランドを全面に出しても、好意度ランキングで同じぐらいの順位のマレーシアとイタリアでは反応も大きく異るはずだ。

もちろん、信頼を獲得している分野では日本を全面に出すのは効果的だ。韓国企業が日本企業の強い海外の市場で、日本企業と誤認させるようなプロモーションを行いシェアを広げたケースもある。

 

日本賞賛の功罪

それでも、ビジネスに限らず、日本を強調すればイタリアでは「日本?いいかもしれないけど。だから?」が本音となるだろう。親日度のランクが近いマレーシアでプラスのイメージを与える可能性が高いにも関わらずだ。

間違ったイメージを抱えたままその国へ行き、過度に日本を強調する人は多い。東アジアではともかく、話の流れ的にあまり関係ないところで日本を持ちだしても「だから?」という感情しか抱かないのが普通だと思った方が良いと思う。

 

海外では残念な事におごった日本人に良く出会う。昨今の日本賞賛記事や報道が増えた事で、こうしたおごった人間が増えていないか正直不安にならざるを得ない。

 

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