日本は医師を含めた病院、国の社会保障制度も海外より優れている。多くの人が民間の生命保険に入らなくとも安心して暮らせる。しかし、海外では、原則として、お金の用意ができなければ高度な医療を受けれない。病院も払えるお金に対してのサービスしかしてくれないのが普通だ。
加えて、救急医療体制が整っていない国、整っていても発展途上国、特に医療設備が整っている病院がないエリアに滞在する場合、海外旅行保険が意味をなさないこともあるだろう。従って、置かれる環境で最大限できることは事前に頭へと入れておくべきだ。
この記事では緊急時での対応を含めた
▶ 事故や急病時における海外旅行保険の使い方
から
▶ 海外旅行保険を持たないと起こり得ること
▶ おすすめの海外旅行保険
まで海外旅行保険に加入すべき理由として詳しく紹介していきたいと思う。
事故や急病時における海外旅行保険の使い方
海外、特に発展途上国では救急救命体制が整っていない。地方ではこれがより顕著であり、救急車にさえ十分な設備が備えられていない。事故もしくは急病時に応急処置を受けられるかどうかは死亡や障害を避ける上で極めて重要である。応急処置に期待できないなら、自身およびパートナーの知識として、最低限の応急手当は身に付けておく必要が出てくる。
重い軽いによらず、できる限りの手当をし、その上で病院等設備が整っている場所での治療が必要になるなら海外旅行保険に頼らなければならない。
海外旅行保険を使った治療を受ける際に必要な手続きとして、
1.意識があり、自分で治療までの手続きを行う場合
2.意識がない状態へ陥る前にすべきこと
に分けて紹介していきたいと思う。
意識があり自分で治療までの手続きを行う場合
まず、事故や事件、急病によって治療の必要が生じた場合、海外旅行保険会社が用意している「海外アシスタンスサービス」や「緊急デスク」といった緊急時連絡先へ電話をする。海外旅行保険であれば事故や急病時のこういった緊急時にかける電話番号を提示している。緊急時のために、事前にメモなどへ記載しておくと良いだろう。
海外現地にデスクがあっても、日本語ができない現地人が対応していたり、スムーズに進まない場合もある。したがって、日本のデスクへ国際電話により連絡した方が良いだろう。
緊急時連絡先への電話では下記のようなことが聞かれる。
・海外旅行保険のID(クレジットカードであればカード番号)、名前等本人確認に必要な情報
・現在地(国・都市名、ホテルの名前等)
・入国、出国予定日等
・近くに病院があればその病院名
・利用付帯のクレジットカードの場合はクレジットカード利用明細(ウェブで閲覧できるものでも可)
海外旅行保険のIDや入国、出国予定日等は予め調べておき、すぐに答えられる状態で電話をかけよう。もちろん、緊急時には、電話をかけるのが先になるので、電話をかけながら調べても良い。
電話で滞在先を伝え、近くにあるキャッシュレス診療が可能な病院を予約してもらう。近くに良さそうな病院があるなら、この病院がキャッシュレス診療可能かどうかを聞いておこう。
保険会社によっては現地で救急車の手配もしてもらえる。
病院へ向かい、診察の際に必要とされるのは
・パスポート
・海外旅行保険(クレジットカードに付帯しているものならクレジットカード)
の他、利用付帯のクレジットカードでは「海外旅行保険が適用されていることが証明できる物(航空券のチケット、ツアー代金領収書、公共交通機関の領収書など)、または募集型企画旅行の料金を支払った事を証明する書類」を求められることもある。
自動付帯の場合はパスポートとクレジットカード以外は基本的に必要無い。こちらもクレジットカードや国、病院によっては異なる可能性はある。必要なものは電話時に確認してほしい。手続き状も簡単なので自動付帯のクレジットカードが望ましいだろう。年会費が無料で海外旅行保険が自動付帯するクレジットカードもある。
>>> 【年会費無料】世界38カ国に日本語対応の現地デスクもある海外旅行保険付き無料クレジットカード
クレジットカードに付帯している海外旅行保険の利用付帯と自動付帯の違い、キャッシュレス診療が不可の場合の治療費請求方法について更に詳しくは下記記事を参考に。

海外旅行保険が適用されれば、どの病院で治療を受けても治療費の補償を受けれる。ただ、治療には前金を払うのが原則である。キャッシュレス診療が可能でないと、海外旅行保険が適用されても自分でお金を用意する必要が出てくる。
手術には何百万円も必要なことがある。通常の海外旅行では大金を持ち歩く人もいないだろう。したがって、キャッシュレス診療が可能な海外旅行保険であること、治療先の病院はキャッシュレス診療が可能であることも事前に確認しておくべきだ。
意識がない状態へ陥る前にすべきこと
意識がない状態になってしまうと、自分でできることはなくなる。自分以外の誰かに治療までの手続きを頼まなければならない。
事故や急病になる状況、環境にもよるので対策については一概には言えない。ただ、現地で治療までの手続きを行ってくれる人は予め作っておくべきだ。頻繁に同じ国へ行くなら、信頼できる現地人を積極的に作っておいた方が良いだろう。
1人で意識不明になった場合、見つけた人はまず持ち物を見る。救急車を呼んでくれる人が周りにいれば、救急隊員もその持ち物を確認するだろう。その時に現地語で「緊急連絡先」「保険会社、保険番号(保険に入っている事実)」等記載したメモを持ち物へ入れておけば、通常は救急隊員がそこへ連絡してくれる。
メモには現地語が話せる知り合いの連絡先を書いておき、事前に緊急時の対応を頼んでおこう。知り合いを通して、救急隊員へと保険に入ってる事実や保険会社への連絡先も伝えてもらえる。知り合いには意識の無い自分に変わり、保険会社へ電話してもらい、手術費までの手続きを頼めば、緊急オペも行ってくれるはずだ。この時、現地の医療機関に保険の補償額についても伝えておけばベストである。
・意識がない場合に備えて、現地語で書かれたメモを持ち物へ入れておく。メモには緊急連絡先(現地の知り合いの連絡先)、海外旅行保険の保険会社、保険番号等を記載しておく
海外旅行保険を持たず海外へ行く前に知っておくべきこと
急病人ならとりあえず治療はしてもらえる日本の病院と違い、海外、特に新興国では支払能力の無い急病患者の治療は拒否されるのが普通だ。大事な人が意識不明の重体になったとしても、保険へと加入していなければ、現金を用意しない限り病院は受け入れてくれない。
病院でどんなに怒り散らそうが叫ぼうが、海外では日本とは違い、それが当然という態度で接してくる。場合によっては警察を呼ばれて追い出されてしまうだろう。
治療を行ってくれたとしても、費用の支払補償を保険でまかなえないだけで、障害の残る結果を招くケースは多々ある。
たとえば、事故により腕や脚の大部分を損傷した状態で病院へ運ばれたとする。保険を含む支払能力がないとわかった場合、先進国でも損傷部分より下を切断し、出血を止めるといった簡単な手術しかなされない。きちんと、神経や血管をつなぎ合わせれば事故前の状態に戻る可能性があってもである。損傷の具合にもよるが、神経や血管をつなぎ合わせ手術には10時間を越えるケースもあり、サポートする看護師や機材を揃えることも求められる。費用が支払われるといった補償がなされなければ現地病院はそこまでの負担をする義務もなく、手術後にクレームを入れても当然賠償金を求めることはできない。
新興国では治療自体を拒否されるケースもある。事故発生当初は命に別条はなくとも、こうした重症の状態で放置されれば命に関わってくるだろう。
命に関わる場合はもちろんのこと、障害が残るかもしれない重大事件や事故でも保険があるかないかで生存率が大きく変わる。発展途上国ほど保険が重要になるだろう。
もちろん、意識不明の負傷者が放置されるような国では、緊急時の海外旅行保険が役に立たないこともある。救急隊員が到着する前に、緊急連絡先や保険会社、保険番号(保険に入っている事実)などを記載したメモが入った持ち物ごと盗難される国もあるからだ。
救急車を呼んでもらえるような国でも、医療設備が整っている病院がないエリアに滞在する場合、海外旅行保険によらず、その環境で緊急時でも最大限できることは事前に頭へと入れておくべきだ。
おすすめの海外旅行保険
海外旅行保険には
・クレジットカードに付いているもの(有料もしくは無料)
・旅行代理店、航空会社が予約サービスのオプションとして提供しているもの(通常は有料)
・保険会社が提供しているもの(有料)
がある。
海外旅行保険が付いたクレジットカードやデビットカード
海外旅行保険でまず用意しておくべきなのが自動付帯の海外旅行保険が付いているクレジットカードである。保険適用までの手続きにおける利便性を考えると、利用付帯よりも自動付帯のものが望ましい。
海外旅行保険が自動付帯しているクレジットカードは年会費かかるものが多い。ただ、世界38カ国に日本語対応の現地デスクもある海外旅行保険付き無料クレジットカードは年会費無料で海外旅行保険が自動付帯している。海外旅行保険の補償額は他の海外旅行保険と合算できるため、複数持つことで上限額を上げることができる。こうした年会費無料で海外旅行保険が自動付帯するクレジットカードは作っておいて損はない。
頻繁に海外旅行へ行き、海外空港でもラウンジを利用したい人は楽天プレミアムカードは用意しておこう。こちらは自動付帯で海外旅行保険が付帯しているだけでなく、世界中の空港で使えるプライオリティパスを追加料金無し(無料)で発行してもらえる。
プレステージ会員はラウンジの利用制限や利用料金を必要としないプランで、通常なら429ドル(およそ4万8000円)の年会費が必要になる。楽天プレミアムカードを持っているだけでこのプライオリティパス・プレステージ会員が無料で付いてくるのだ。
楽天カードに付帯する海外旅行保険について詳しく知りたい人は下記記事を参考に。

アメリカの場合、医療搬送を含めると治療費が1000万円を越えることも多々ある。したがって、クレジットカードに付帯する海外旅行保険で傷害治療費用や疾病治療費用の補償額が足りないなら、クレジットカード以外の保険にも加入しておくべきだ。東南アジアや発展途上国でも数百万円はあった方が良い。
欧米へ年に数回行く予定の人はゴールドカードやプラチナカード以上の補償を受けれるミライノデビットPLATINUMがおすすめである。こちらは審査不要のデビットカードで、傷害治療費用1000万円、疾病治療費用700万円まで補償を受けれる。

ただし、年会費は10800円である。
旅行代理店、航空会社、保険会社が提供している有料の海外旅行保険
保険会社はもちろん、海外旅行保険はホテルや航空券の予約ができる旅行代理店、航空会社でも申し込みができる。これらは通常追加料金が必要(有料)である。ただ、旅行期間や渡航先によるものの、1週間程度の旅行なら数千円程度となっている。
航空会社の海外旅行保険では航空機遅延費用といった名称の補償として飛行機が遅れたことにより、損害を被った場合になされる補償などもある。たとえば、経由先で航空機が遅延し、ホテル宿泊が必要になった場合にホテル代を出してもらえるといった性質のものである。
海外旅行保険はそれ自体を保険会社に直接申し込むことももちろんできる。空港でもこうした海外旅行保険の申し込みブースがある。
成田空港の海外旅行保険申し込みブース
ただ、空港のブースで申し込む保険は、補償額に対し、料金的に一番高くなりがちである。有料の保険でおすすめなのはネットで申し込みが可能な損保ジャパン日本興亜の「新・海外旅行保険【off!(オフ)】である。この旅行保険ではオーダーメイドプランといった形で補償額を調整することができる。
こちらはネットからの申し込みが可能である。保険証は数日で届けてくれる。出発に間に合わない場合はネット上で保険証を印刷という形でも良い。
海外旅行先で治療が必要になるケースは多くない。しかし、有料の海外旅行保険でも料金的な負担は少ない。海外旅行保険を加入していないことで生じるリスクを考慮すれば、金銭的にはきわめて安い。
海外旅行保険で受けれる補償の中身から海外旅行保険の利用前に知っておくべきことについては下記記事を参考に。
