ウェルスナビ(WealthNavi)は同名の企業が提供する資産運用サービスである。10万円から資産運用が可能で、毎月決まった金額を積み立てる「自動積立」は月1万円から行える。
手数料は運用金額の年率1%(税別)を基準に、運用期間が長ければ0.9%まで、3000万円以上は0.5%にまで下がる。為替コストや取引手数料はかからない。
ウェルスナビが投資するETFはすべて日本の証券会社でも買える。NISA口座を使えば、手数料だけでなく、利益にかかる税金も年間120万円、5年間600万円まで抑えられる。NISA口座の非課税枠いっぱいまでは、こちらの利用を優先すべきだ。
NISA口座を上限まで利用した上で、ウェルスナビの手数料が高いかどうかについては、リスク許容度に応じた投資先ETFの比率調整、リバランス(再配分)自動化にそれだけの価値があるかどうかで判断すべきだろう。
この記事では
▶ ウェルスナビの手数料
▶ ウェルスナビの投資先ETFにかかる手数料と税金
から
▶ ウエルスナビへと投資する前に検討すべきこと
まで詳しく述べていきたいと思う。
ウェルスナビの手数料について
ウェルスナビの手数料は運用金額の年率1%(税別)、毎月1日(休日の場合は翌営業日)に12分割で支払う。
ウェルスナビから銀行への出金手数料は無料、入金手数料もクイック入金に対応している金融機関(ネット銀行4社や大手都市銀3社)は無料になっている(クイック入金とはどのようなサービスですか?インターネットバンキングに対応している金融機関)。
つまり、手数料は原則として年率1%(税別) のみである。
手数料が1%以下になる条件
ウェルスナビの手数料は運用金額と運用期間によって1%以下に抑えられる。
預かり資産3000万円までは年率1.0%(税別)の手数料、3000万円を超える額については年率0.5%(税別)の手数料になる。
例えば、5000万円をウェルスナビで運用した場合、
3000万円:年率1.0%(税別)の手数料=30万円(税別)
2000万円:年率0.5%(税別)の手数料=10万円(税別)
計40万円(税別で年率0.8%)の手数料
になる。
また、運用資産が3000万円以下でも50万円以上なら0.01%、200万円以上なら0.02%、運用期間に応じ、半年ごとに割引される。3000万円以下の資産にかかる1%の手数料は0.9%まで下げられる。
0.9%にまで下げるには、0.01%(50万円以上)なら5年間、0.02%(200万円以上)なら2.5年間、ウェルスナビでの運用が必要になる。
3000万円以下の資産にかかる手数料の推移(wealthnavi.comより)
この手数料を払う価値があるかどうかは、ウェルスナビのロボアドバイザーが自動的に行ってくれる投資先ETFの比率調整、リバランス(再配分)の必要性で判断する必要があるだろう。
ウェルスナビのロボアドバイザーが行うこと
ウェルスナビではまず、利用者独自のリスク許容度を決める。リスク許容度を決め、最低投資金額を入金すると、最短でその日の夜に、リスク許容度に応じてETFの買い付けを行ってくれる。自動積立なら決まった額、積み立てコースに応じて月1回、複数回定額、さらにはカスタムでも買い付けてもらえる。
これら買い付けにより資産の運用が始まり、運用期間中もリスク許容度に応じて投資先ETFの購入比率調整、リバランス(再配分)を自動的に行なってくれる。ウェルスナビの手数料は、これら自動買付、自動資産調整のために生じていると見て良いだろう。
ウェルスナビの投資先ETFにかかる手数料と税金
ウェルスナビは
1.米国株
2.日欧株
3.新興国株
4.米国債券
5.物価連動債
6.金
7.不動産
のクラスに分けられ、それぞれに対応するETFへとリスク許容度に従い投資し、配分を調整してくれる。
ウェルスナビが投資対象とするETF(wealthnavi.comより)。上記純資産総額、経費率は2017年4月末時点。
1から5までのリスク許容度別・最適ポートフォリオ配分比率の例として、下記のような比率を紹介している。
つまり、ある程度のリスクを許容できる人には米国株(VTI)、日欧株(VEA )といった株式の割合を高くし、リスク許容度が低い人には株式よりも米国債(AGG)や物価連動債(TIP)の割合を高くしている。
これは株式が高パフォーマンスを望める一方、不況時における下落幅も大きいからである。
これらのETFはウェルスナビを通さなくとも、個人は日本の証券会社で購入できる。ただし、ETFの購入・保有にも手数料はかかる。
ETFにかかる手数料
ETFの購入・保有にかかる手数料には
1.為替コスト
2.取引手数料
3.総経費率
がある。
為替コスト
ウェルスナビの投資先はすべてアメリカの市場で取引されているETFであり、ドル建てになる。買付に必要なドルを用意するのにかかる手数料が為替コストである。要は日本円からドルへと両替する際にかかる手数料である。
為替コストは証券会社によって異なる。日本でもっともオトクな買付方法としては、頻繁に為替コスト無料のキャンペーンが行われている住信SBIネット銀行およびそれに対応するSBI証券だろう。
2019年7月22日から9月27日までアメリカドルの為替コスト0円キャンペーン(netbk.co.jpより)。住信SBIネット銀行は通常時でも1ドルあたり4銭(0.04円)と格安である。
住信SBIネット銀行で買い付けたアメリカドルをSBI証券へと入金すれば、それを元手にETFの購入ができる。
SBI証券の外貨入金手続き。SBI証券ホームページの右上の「入出金・振替>外貨入金」で、住信SBIネット銀行で購入した外貨をSBI証券へ移動できる。
取引手数料
ウェルスナビの投資先ETFは1単元30ドルから140ドルで購入できる。買い付けるためには、1単元以上のドル残高+買付手数料が必要になる。ETFを購入する際にかかる手数料が買付手数料になる。
買付手数料も証券会社(銀行)によって異なる。人気証券会社のSBI証券、楽天証券、マネックス証券いずれもネット上の注文なら購入代金の0.45%(税込0.486%)になっている(上限手数料は税込21.6ドル)。しかし、買付手数料はNISA口座を利用すれば無料にできる。
ウェルスナビの投資先ETFはすべてSBI証券のNISA対象商品になっている。つまり、NISA口座を利用すれば、買付手数料は0円にできる。
ただし、NISA口座でも売却時には0.45%(税込0.486%)、上限21.6ドルの売却手数料は取られる。また、ETFは外国株式と同じ分類であり、つみたてNISA口座ではなく、NISA口座でしか購入できない点は注意すべきだ。
総経費率
総経費率(エクスペンスレシオ)は1年間でかかる経費の総額であり、ETFを保有している限り、毎日少しずつ回収される。投資信託の信託報酬と似た性質のものである。
総経費率は毎年減少傾向であり、ウェルスナビの投資先ETFにおける2019年8月現在の総経費率をまとめると下記のようになっている。
総経費率(信託報酬) |
|
米国株 |
0.03% (バンガード トータルストックマーケットETF) |
日欧株 |
0.05% (バンガード FTSE先進国市場(除く米国) ETF) |
新興国株 |
0.12% (バンガード FTSEエマージングマーケッツETF) |
米国債券 |
0.04% (iシェアーズ コア 米国総合債券市場 ETF) |
物価連動債 |
0.19% (iシェアーズ 米国物価連動国債 ETF) |
金 |
0.40% (SPDR ゴールド シェア) |
不動産 |
0.42% (iシェアーズ 米国不動産 ETF) |
これらのETFを個別に購入し、自分でポートフォリオを組んだ場合、一番高い不動産ETFの割合を100%にしても、総経費率は0.42%である。総経費率が0.05%以下になる米国株ETFや日欧株ETFの割合を高くすれば、0.1%程度にも抑えられるだろう
アメリカドルを住信SBIネット銀行のキャンペーン時に買い付ければ為替コストは0になる。また、SBI証券のNISA口座でETFを購入すれば、ETFの買付手数料も0円になる。
SBI証券NISA口座で取られる唯一の手数料・総経費率も0.1%から0.2%に抑えるのは難しくないだろう。
ウェルスナビと投資先ETFにかかる税金
こうした手数料に加えて、NISA口座では税金もかからない。利益が生じた場合、一番ネックになるのは手数料よりも税金である。
ウェルスナビでは証券会社での取引と同様に、利益に対して一律20.315%の税金がかかる。ETFも売却時に利益が出ていれば、同様に20.315%の税金がかかる。
しかし、NISA口座では年間120万円までの投資を5年間、最大で600万円分までが非課税となる。
この点だけ見ても、優先的に利用すべきはNISA口座というのがわかるだろう。
ウエルスナビへと投資する前になすべきこと
ウェルスナビの手数料を評価したいなら、他の投資信託と比較するよりも、ウェルスナビで運用されているETFの手数料を見た方が良いだろう。その上で、ETFへ投資で使える非課税制度の利用も検討すべきだ。
1.ウエルスナビでの資産運用
と
2.SBI証券のNISAでウェルスナビの投資先ETFを購入、運用
した場合にかかる手数料、最低購入価格、税金についてまとめると下記のようになる。
1.ウエルスナビ |
2.SBI証券(NISA口座) | |
年間運用手数料 |
年0.9%から1%(税別) (3000万円以上は0.5%) |
年0.03%から0.42% |
為替コスト | 無し |
1ドルあたり4銭(0.04円) (キャンペーン中は0円) |
取引手数料 |
買付手数料:無し 売却手数料:無し |
買付手数料:無し 売却手数料:0.45%(税別)、上限20ドル(税別) |
最低運用(購入)価格 |
10万円(WealthNavi(ウェルスナビ) for ネオモバなら1万円から) |
1銘柄30ドルから140ドル |
税金 |
利益に対して一律20.315% |
年間120万円、5年間600万円まで非課税 |
年間の手数料および非課税枠で見れば、殆どのケースでSBI証券NISA口座の方がコストを安く抑えられるだろう。
ウェルスナビは年齢や年収、金融資産、積立金額、運用目的などでリスク許容度を判断してくれる。
>>> 無料診断(最短1分・全6問):ウェルスナビ(WealthNavi)
また、このリスク許容度によって、投資先ETFの比率調整だけでなく、リバランス(再配分)も行ってくれる。
自分でETFを買い付けるなら、アメリカドルへの両替だったり、買付、売却の手続き、割合の調整、リバランスも基本的には手動で行わなければならない。初心者には難しく、判断に迷うこともあるはずだ。
こうした手間はあるものの、ETFの購入をするなら、NISA口座の非課税枠いっぱいまではこちらを優先的に利用した方が良いだろう。
NISA口座の中では、為替コストの点でSBI証券がおすすめである。
SBI証券のNISA口座を最大限に生かす使い方については下記記事を参考に。
NISAの年間限度額を埋めた上で、ウェルスナビの1%を基準とする手数料が高いかどうかは、リスク許容度に応じたETFの比率配分の自動化に、この価値があるかどうかで判断すべきだ。
ウェルスナビが投資する7つのETFについて、簡単に理解しておきたい人は下記記事を参考に。